アプリの運用・保守費用は、一般的な相場で月額10万円〜、年間では開発費の15〜20%程度が目安です(開発費300万円なら年間45万円前後)。近年はGoogleもAppleもストアの要件を強化しており、保守を止めたアプリは検索結果からの非表示や削除の対象になり得ます。この記事では、費用の内訳・OSアップデート対応費・契約形態の選び方までを、公開されている相場データの出典付きで整理します。
※費用はいずれも各媒体が公開する相場情報をもとにした一般的な目安です。アプリの規模・要件により大きく変動します。
アプリ運用・保守費用の相場(早見表)
まず、複数の媒体が公開している目安を基準別に整理します。
| 基準 | 費用の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 開発費に対する年率 | 年間で開発費の15%程度(2026年の記事では15〜20%とする例も) | Enlyt・SIA ほか |
| 月額の定額目安 | 月額10万円〜 | Pentagon |
| 保守・運用の外部委託 | 月額5万〜30万円(システム系の運用委託は月額20万〜50万円) | Enlyt・システム幹事 |
| 規模別の月額 | 小規模: 数万〜10万円前後/中規模: 10万〜50万円/大規模: 数十万〜100万円以上 | GeNEE |
開発会社へのアンケートでも、約半数以上が「月10万円以上を要する」と回答しています(出典: Pentagon)。年率の目安は「開発費300万円なら年間約45万円(月額換算 約3.8万円)」が一つの計算例です(出典: Enlyt)。
一方、システム開発全般を扱う媒体には「開発費の約5%/年」を適正とする流派もあります。ただし同媒体も、大規模・複雑なシステムでは15%程度になるとしており、スマホアプリの予算組みは15%側で見るのが無難です(出典: システム幹事)。
外注せず社内でまかなう場合は、委託費の代わりに年収300〜600万円クラスの人件費が目安になります(出典: Enlyt)。なお、ベースとなる開発費そのものの相場は、別記事「大阪でアプリ開発を依頼する費用相場」で詳しく解説しています。
前提: 「運用」と「保守」は作業が違う
保守業務は、アプリ本体に手を入れる仕事です。アプリのアップデート・OSアップデート対応・機能追加・不具合修正・セキュリティパッチの適用が含まれます(出典: 発注ラウンジ)。
運用業務は、アプリを安定して動かし続ける仕事です。システム環境の監視・データバックアップ・アプリの起動停止・パフォーマンス管理が該当します(出典: 発注ラウンジ)。
見積もりを比較するときは、この2つのどこまでが月額に含まれるかを最初に確認してください。同じ「月10万円」でも、カバー範囲が違えば実質的な価格はまったく別物です。
費用の内訳(7項目)と項目別の単価
アプリの運用・保守費は、大きく次の7項目で構成されます(出典: Pentagon)。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| (1) サーバー費用 | ユーザー数で変動 |
| (2) ドメイン | 年1,000〜2,000円 |
| (3) SSL証明書 | 無料〜年約10万円 |
| (4) ストア登録費 | Google Play 初回25米ドルのみ/App Store 年99米ドル |
| (5) 不具合対応 | 1件10万円程度(出典: シースリーインデックス) |
| (6) 機能アップデート | ログイン機能追加20〜50万円・SNSログイン30〜80万円・決済システム導入50〜150万円以上 |
| (7) OSアップデート対応 | 月3万〜5万円(出典: シースリーインデックス・GMOおみせアプリ) |
機能追加の単価は媒体によってレンジが割れます。メールログイン機能追加を20万〜40万円、SNS連携ログインを10万〜25万円とする媒体もあり(出典: シースリーインデックス)、仕様しだいで上下する前提で見てください。
技術者を人月で確保する場合は、プログラマーで月50万〜100万円、SEで月60万〜160万円が目安です(出典: シースリーインデックス)。保守費は開発費に対する比率で見積もられることが多いため、開発手法によってベースの開発費が変われば保守費の目安も連動します。開発手法ごとの費用感は別記事「Flutterでアプリ開発費はどれくらい安くなる?」をご覧ください。
OSアップデート対応費は「定常分」と「年次スポット分」に分けて見る
OSアップデート対応の定常分は、月額3万〜5万円が相場です(出典: GMOおみせアプリ)。日常の動作確認や軽微な追従修正がここに含まれます。
注意したいのは、毎年のiOSメジャーアップデート対応です。月次保守費(月10万円以上が一般的)には含まれないケースが多く、別途「50〜200万円程度」の年次予算の確保が推奨されています(出典: 株式会社ripla)。
対応バージョンの設計にも目安があります。「最新iOS+1世代前」の2バージョン対応でユーザーの90%以上をカバーでき、シェア3%未満になった旧バージョンは打ち切りを検討するのが現実的とされます(出典: 株式会社ripla)。
保守をやめるとどうなるか(制度化されたリスク)
「動いているから保守は不要」は、現在のストア運営では通用しません。放置アプリへの措置は、両ストアですでに制度として実施されています。
- Google Play: 最新Androidメジャーリリースから2年以内にターゲットAPIレベルを更新しないアプリは、新しいOS端末の新規ユーザーの検索結果に表示されなくなる(2022年11月1日〜。既存インストールユーザーは継続利用可。出典: INTERNET Watch)
- App Store: 過去3年以内にアップデートがなく、直近12カ月のダウンロードが皆無または極めて少ないアプリには削除通知が送られる。猶予(当初30日・2022年に最大90日へ延長)内に更新しなければ、機能していても削除される(出典: GIGAZINE)
- 不具合リスク: OSアップデート後に起動エラー・ブラックアウト・フリーズ等が発生するケースは珍しくなく、保守体制がないと対応が遅れユーザーの信頼を失う(出典: 発注ラウンジ)
2025〜2026年の新要件: ターゲットAPI引き上げが「毎年の必須作業」に
Google Playでは2025年8月31日以降、新規・更新アプリにAndroid 15(API 35)以上が必須になりました。さらに2026年8月31日までに、更新していない既存アプリもAPI 35以上(モバイル)への引き上げが必要で、未達のアプリは新しいOS端末の新規ユーザーから見つからなくなります(出典: Google Play Console ヘルプ)。
期限に間に合わない場合は、2026年11月1日までの延長をPlay Consoleからリクエストできます。いずれにせよ「年1回のターゲットAPI引き上げ改修」は、保守契約に組み込むべき定常作業になったと言えます。
契約形態と選び方(定額・従量・チケット制)
保守契約は「年間保守契約(月額・年額の定額で一定範囲を継続カバー)」と「スポット契約(障害・依頼の都度発注)」に大別され、法的性質は準委任契約が一般的です(出典: シースリーインデックス)。費用は開発費の年間15〜20%が目安で、1,000万円の開発なら年150万〜200万円に相当します。
課金方式は次の3形態があります(出典: GeNEE)。
- 定額制: 月額固定。予算管理しやすく緊急対応もスムーズだが、使わない月も費用が発生する
- 従量課金型: 実作業分のみで無駄がないが、月次費用が読みにくい
- チケット制・ポイント制: 事前購入分を消化する中間型。軽微な修正を依頼しやすい
あわせて契約時はSLA(サービス品質保証)を、①一次回答時間(例: 受付後30分以内)②復旧目標時間(RTO)③稼働率(例: 月間99.9%)の3観点で定めておくと、トラブル時の認識ズレを防げます(出典: シースリーインデックス)。

